プロローグ
ソウル大学病院口腔顎顔面外科。イ・ソンジュン(31)は診察室の前の椅子に座って手を震わせていた。
「両顎手術最終相談 - 午後3時」
受け口。下顎が上顎より前に出ている不正咬合。ソンジュンはこの顎のせいで30年間苦しんできた。
第1話 - 30年の苦痛
ソンジュンは大手ローファームの弁護士だった。優れた頭脳と論理力で認められていたが、いつも一つのことが足かせになっていた。
「イ弁護士、印象がちょっと強く見えて...」
顧客ミーティングでよく聞く言葉だった。受け口のせいで印象が攻撃的に見えるのだ。
子供の頃から「シャーク」「しゃくれ」というあだ名をつけられて生きてきた。写真を撮る時は顎を隠そうと頭を下げ、笑う時も口を覆った。
30歳になった年、ソンジュンは決心した。もうこんな風には生きられないと。
第2話 - 決断
両顎手術は並大抵の手術ではなかった。全身麻酔で4〜6時間、回復期間は最低1ヶ月。費用も1,500万ウォンを超えた。
しかしソンジュンはすでに決心していた。
「もう先延ばしにはできない。人生を変えるんだ。」
ソウルの有名な口腔顎顔面外科でCT撮影と3Dシミュレーションを受けた。医師が説明した。
「上顎を前に、下顎を後ろに調整すれば正常な咬合になります。顔のラインもかなり変わるでしょう。」
第3話 - 手術
手術当日。全身麻酔がかかる前、ソンジュンは心の中で繰り返した。
「生まれ変わるんだ。」
目を覚ますとICUだった。顔全体が腫れて口が動かせなかった。上下の歯がワイヤーで固定されていたからだ。
2週間流動食だけを食べた。まともに話すこともできなかった。最も辛い時間だった。
しかし鏡で自分を見るたびに確信した。腫れの中でも変わった顎のラインが見えた。
第4話 - 回復
1ヶ月後、ワイヤーが外された。腫れもかなり引いた。
鏡の前に立ったソンジュンは信じられなかった。受け口が消えてすっきりした顎のラインが現れた。
「これが...俺の顔?」
写真を撮ってみた。以前のように顎を隠す必要がなかった。正面から撮っても、横から撮っても自然だった。
ソンジュンは初めて自分の顔が気に入った。
第5話 - 復帰
2ヶ月の休職後、ローファームに復帰した。同僚たちの反応は様々だった。
「ソンジュン、どこで癒されてきたんだ?完全に変わったな!」
「ダイエットした?顎のラインがきれいになったね。」
直接的に手術について言及する人はいなかった。しかしソンジュンはすでに心の準備ができていた。
「はい、両顎手術しました。30年のコンプレックスだったので。」
正直に話すと同僚たちはむしろ応援してくれた。
第6話 - 彼女に出会う
法曹人のネットワーキングパーティーでソンジュンは初めて彼女に出会った。キム・スア(29)、検察庁で働く検事。
強くて賢い眼差し。ソンジュンは一目惚れした。
「こんにちは、私はローファームで働くイ・ソンジュン弁護士です。」
以前のソンジュンならこうして先に近づくことはできなかっただろう。でも今は違った。
「はじめまして。キム・スア検事です。」
スアの微笑みにソンジュンの心臓が高鳴った。
第7話 - 近づく
業務上会う機会が増え、二人は自然と親しくなった。法律の議論もし、一緒に夕食も食べた。
「ソンジュンさん、一緒にいると本当に楽ですね。他の弁護士たちはなんだか堅いのに、ソンジュンさんは柔らかい感じがします。」
スアの言葉にソンジュンは苦笑いした。以前は「印象が強い」という言葉しか聞かなかったのに。
「ありがとう。実は以前はちょっと違ったんです。」
「どう違ったんですか?」
ソンジュンは少し考えてから言った。
「後で話します。」
第8話 - 告白
ソウルの森の散歩道。ソンジュンはスアに真実を打ち明けた。
「スアさん、俺両顎手術したんです。元々受け口で...」
ソンジュンは携帯から手術前の写真を出して見せた。スアは一瞬驚いた表情を見せた。
「本当ですか?完全に別人みたいですね。」
「はい、30年間のコンプレックスでした。だから大きな決心をして手術しました。」
スアは長い間ソンジュンを見つめてから言った。
「勇気がありますね。私はそういう決断力が好きです。」
第9話 - 受け入れる
スアの反応はソンジュンにとって大きな慰めになった。整形を恥ずかしく思う必要はないと気づいた。
両親にも話した。
「お父さん、お母さん。俺両顎手術したんだ。」
母は驚きながらも息子の変わった顔をじっと見た。
「だからこんなに変わったのね。かっこよくなったわ、うちの息子。」
父は黙って息子を見つめてから言った。
「お前が幸せならそれが大事だ。」
第10話 - 新しい始まり
両顎手術から1年。ソンジュンの人生は完全に変わった。
法廷でより堂々と弁論できるようになった。顧客も「印象がいい」と信頼を見せた。
何よりスアという大切な人に出会えた。
「ソンジュンさん、昔の写真を見ると今とは全然違うけど、両方ともソンジュンさんじゃないですか。大事なのは外見じゃなくて、その中にいる人ですよ。」
スアの言葉にソンジュンは頷いた。
エピローグ - このアゴは私のもの
2年後、ソンジュンはスアにプロポーズした。二人が初めて出会ったネットワーキングパーティーの会場で。
「スアさん、俺と結婚してください。」
「はい、します。」
結婚式の日、ソンジュンは鏡の前に立った。変わった顎のラインを触りながら思った。
この顎は最初から自分のものだった。受け口だった時も、今のすっきりした顎も。すべて自分の人生の一部だ。
両顎手術は外見だけを変えたのではなかった。自分を愛する方法を教えてくれた。
「このアゴは俺のものだ。俺が選んだ俺の姿だ。」
ソンジュンは堂々と微笑みながら結婚式場へ向かった。
- 完 -