遠藤達哉作品における「仮面」のテーマ
『SPY×FAMILY』の魅力を語る上で欠かせないのが、遠藤達哉先生の前作『TISTA』『月華美刃』から続く「仮面を被る者たち」というテーマだ。本作では、スパイ・殺し屋・超能力者という三者三様の「秘密」を抱えた者たちが、皮肉にも「普通の家族」を演じることで本当の居場所を見つけていく。
黄昏(ロイド・フォージャー):最強スパイの空虚さ
西国の凄腕スパイ「黄昏」は、幼少期に戦争で故郷と家族を失った過去を持つ。彼が「子供が泣かない世界」を目指すのは、かつての自分を救いたいという無意識の願望でもある。
- キャラクター造形の妙:完璧超人に見えて、実は感情表現が苦手という設定が絶妙
- 『名探偵コナン』との比較:コナンが「子供のふり」をするのに対し、ロイドは「父親のふり」から本物の父性に目覚めていく
- 声優・江口拓也の好演:冷静なナレーションと動揺する内心の演じ分けが見事
ヨル・フォージャー:殺し屋が求めた「普通」
「いばら姫」の異名を持つ凄腕の殺し屋でありながら、日常生活では天然ボケという二面性。この設定は『暗殺教室』の殺せんせーにも通じる「ギャップ萌え」の王道だが、ヨルの場合はより切実な背景がある。
- 弟・ユーリとの関係:幼くして両親を亡くし、弟を育てるために殺しの道へ。彼女にとって暴力は「愛」の表現手段
- 少年漫画における女性キャラの新境地:「強くて可愛い」だけでなく、母性と殺意が同居する複雑さ
- 早見沙織の声の表現:戦闘時の凛々しさと日常の柔らかさの切り替えが秀逸
アーニャ・フォージャー:読者の視点を担う存在
心が読める超能力を持つアーニャは、物語構造上きわめて重要な役割を果たしている。彼女だけがロイドとヨルの本当の姿を知っており、それでも二人を「父」「母」として慕う。
- 「ワクワク」の裏にある恐怖:何度も施設を転々とした孤児という設定。今の家族を失いたくないという必死さ
- 令和の人気キャラクター:「アーニャピーナッツが好き」など、SNS時代に最適化されたミーム性
- 種﨑敦美の怪演:子供らしさと達観した台詞回しの両立
「偽りの家族」が描く逆説的真実
血の繋がりがないからこそ、毎日「家族であること」を選び続けるフォージャー家。これは『うさぎドロップ』や『甘々と稲妻』といった「疑似家族」作品の系譜を継ぎながら、スパイ×アクションという新しい切り口で描いた意欲作と言える。
おすすめの読み方
原作は少年ジャンプ+で連載中(隔週更新)。アニメはPrime Video、Netflixなどで配信中。劇場版『CODE: White』も大ヒットを記録した。