なぜ『呪術廻戦』は少年漫画の常識を覆したのか
週刊少年ジャンプという「友情・努力・勝利」の王道を掲げる雑誌において、『呪術廻戦』は異質な存在だった。主要キャラクターが容赦なく死に、勝利しても代償が伴い、「正しさ」が常に問い直される。芥見下々先生が提示したのは、『HUNTER×HUNTER』や『チェンソーマン』に連なる「ダークファンタジー×少年漫画」の新たな形だ。
五条悟という「最強」の使い方
物語における最強キャラクターの扱いは、作家の力量が試される部分だ。『BLEACH』の藍染、『NARUTO』のマダラのように、最強は物語を停滞させるリスクを持つ。
芥見先生の解答は明快だった——最強を退場させ、その不在によって物語を動かす。
五条悟退場の物語的意義
- 次世代が「守られる側」から「戦う側」へ強制的に移行
- 「最強がいれば何とかなる」という甘えの否定
- 宿儺という絶対悪に対する絶望感の演出
これは『鬼滅の刃』における煉獄杏寿郎の死が、炭治郎たちの覚悟を決定づけたのと同じ構造だ。ただし、より残酷で、より救いがない。
虎杖悠仁:「普通」であることの強さ
虎杖には血統も、特別な才能もない。彼が持っているのは「異常なまでの身体能力」と「他者を思いやる心」だけだ。これは従来の少年漫画主人公——悟空の血統、ナルトの九尾、デクのワン・フォー・オール——とは一線を画す。
宿儺という最悪の呪霊を体内に宿しながら、それでも人間として在り続けようとする姿は、『寄生獣』の泉新一を彷彿とさせる。人間性とは何か、という問いを体現するキャラクターだ。
「呪い」とは何だったのか
呪術廻戦における呪霊は、人間の負の感情が具現化したものだ。これは単なるファンタジー設定ではない。
- 誹謗中傷がSNSで可視化される現代
- 社会への不満が暴力として噴出する事件
- 見て見ぬふりをされる差別や偏見
芥見先生は「呪い」を通じて、現代社会が生み出す集合的な悪意を描いた。呪術師とは、その悪意を祓う者——つまり、社会の歪みに立ち向かう者の象徴だ。
関連作品と今後の注目作
『呪術廻戦』が好きな読者には、以下の作品もおすすめしたい:
- 『ダンダダン』(少年ジャンプ+)——オカルト×バトルの新機軸
- 『怪獣8号』(少年ジャンプ+)——「人間」と「怪物」の境界を描く
- 『アンデッドアンラック』(週刊少年ジャンプ)——能力バトルの新たな可能性