藤本タツキが構築した「恐怖の生態系」
『ファイアパンチ』で漫画界に衝撃を与えた藤本タツキ。チェンソーマンでは、その才能がさらに研ぎ澄まされた形で発揮されている。本作の世界観は、単なる設定ではなく、現代社会への鋭い批評として機能している。
悪魔の誕生メカニズム:集合的恐怖の具現化
チェンソーマン世界の悪魔は、人間の恐怖から生まれる。これは『呪術廻戦』の呪霊とも通じるが、藤本作品の特徴はその恐怖の「質」と「量」が直接戦闘力に反映される点だ。
- 銃の悪魔:アメリカの銃社会問題を反映し、世界中のニュースで「銃」への恐怖が増幅された結果、圧倒的な力を持つ
- 闇の悪魔:人類の根源的恐怖であるため、地獄に君臨する超越的存在
- チェンソーの悪魔:「食べた悪魔の存在を消す」という能力は、人々の記憶からも抹消されることを意味する
マキマ=支配の悪魔の真意
マキマは『MONSTER』のヨハンや『DEATH NOTE』の夜神月と比較されることが多い。しかし決定的に異なるのは、彼女の目的が「より良い世界の創造」である点だ。戦争、死、飢餓といった概念をチェンソーマンに食べさせて消滅させる——一見理想的に見えるこの計画の恐ろしさは、人間から「選択する自由」を奪うことにある。
デンジという主人公の革新性
週刊少年ジャンプの主人公といえば、「仲間を守る」「夢を叶える」といった大きな目標を持つのが定番だった。しかしデンジの望みは「食パンにジャム塗って食べたい」「女の子とデートしたい」という極めて素朴なもの。これは藤本タツキによる、従来のジャンプ主人公像への意図的なアンチテーゼだ。
第二部「学園編」への展開
少年ジャンプ+で連載中の第二部では、高校生となったデンジと新主人公・三鷹アサの物語が描かれる。「戦争の悪魔」ヨルの登場により、物語はさらに複雑な様相を呈している。
関連作品:『ファイアパンチ』(藤本タツキ)、『呪術廻戦』、『地獄楽』、『ダンダダン』(龍幸伸、藤本タツキのアシスタント出身)